30.サイレンス

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「姉さんは本当に、レイルさんに一番近い人なんだね。」 メイデンが振り返り、ルアードをじっと見つめた。 最近はこんな目をする事が多い。諦念が浮かぶ、冷めた眼差し。いつも燃えている赤銅色の瞳がこの時ばかりは息を潜める。水面のように静かだが、澄んではいない。早朝の湖畔の様に、靄がかかっている。 「そうね。あいつは私のもの。」 「本当、姉さんはそういう表現しか出来ないんだね。」 ルアードはぎこちない微笑みを浮かべた。 メイデンは目を反らした。ルアードが自分との距離の取り方を決めあぐねている。いや、迷っているのだ。自分と、彼に背負わされた名前。メイデン・メタルパレス、スティンガー・メタルパレス。本来の名前を捨て、名乗らされている。 どちらを選ぶだけで、二人の人生は大きく変わる。メタルパレス家の一員として義務と歴史に一生縛られ続けられるか、ただの個人として好きに生きるか。 きっと誰もが後者を選ぶだろう。だが、後者を選ぶには障害が多過ぎる。失うものを多くある。傷付くだろう、苦しむだろう。 それでも二人は後者を生きる事を選んだ。 、、、、、、、 そうしたかった。 「ねえ、ルアード。」 メイデンが窓に目線を戻した。 「あなたはルアード・ソランでいて。私がどうなっても、この先何が起ころうと、そうして。」 「姉さん・・・?」 ルアードの表情が曇った。見なくてもメイデンには分かった。 それ以上は何も語らなかった。 語る気は無かった。
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