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【母上の記憶】
ある夜、私たちは野営をすることになって、火をたいていた。
京まであと少し、もう野営の必要はなくなるだろう。
宿禰「真人様は、もうお休みですね」
〇〇「ええ。宿禰も休んでいて」
宿禰「し……しかし!」
〇〇「春馬が見張りをしてくれています。それに、今日は何だか眠たくならないのです」
宿禰「……姫」
私は、未だに真人と宿禰に春馬との約束の事を話せずにいた。
真人の髪をそっと撫でる。
〇〇「少し、春馬を見てきます」
宿禰「……分かりました」
私は少し離れた所で見張りをしている春馬のところへとむかった。
〇〇「春馬……?」
春馬は、何か考え事をしているようで、刀を抱いて座り、空を見上げていた。
春馬「……どうした?」
〇〇「……なかなか眠れなくて……」
春馬「……そうか……」
私は、そっと春馬の隣に座る。春馬は、一瞬私をみて微笑むと、また空を見上げた。
〇〇「……何を考えてたのですか?」
春馬「お前、本当にその着物似合ってんな」
〇〇「え?」
春馬「お前見ると、母上を思い出す」
空を見上げたまま、春馬はぽつりぽつりと話し出す。
春馬「俺も盗賊なんかの頭になる前は、結構いい暮らししてたんだ。でも、その……お前らと……同じだ」
〇〇「……それで、私の条件をのんでくれたのですか?」
春馬「……ああ。お前のあの顔……俺を守る時の母上そっくりだった」
〇〇「……そうだったのですか」
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