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「……で」
急に真面目な顔に戻って低い声で言う。
「アレか」
アレ、というのはさっきの男だと即座に理解し、振り返って少し離れた地面を眺める。
「……ああ。あれで違うと言われたら逆に驚く」
不様に地面にうつ伏せている男の手は、紅く――血で染まっていた。
「はいはい。んじゃとりあえずキリキリ捕まえてギリギリ吐かせようか」
パン、パンと手を叩くと、どこに隠れていたのかピシッと決まった制服を着た男が数人現れた。
倒れた男の両手を見事な手捌きで後ろ手に縛り(それこそ本当にギリギリと縛っていた)、軽々と担いで、ドレス姿の少女とその近くの青年にペコリと会釈程度に頭を下げ、どこへともなく消えていった。
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