記憶フェイカー

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 俺が肩落としてあれこれと思いを巡らせながら校門をくぐると、待ち構えていたかのように門の陰から春菜が顔を出した。なぜか満面の笑みで――  実のところ、こいつは朝から機嫌を損ねたせいで一日中嫌味しか口にしていなかった。たまには甘味も欲しい……なんて部活が始まる前までは思っていたりした。 「今日はウチでご飯食べるんでしょ? 丁度、ここでダウンがてらストレッチをしてた所なのよ。今終わったし、ついでに一緒に帰ろっか?」  わざわざ校門前でストレッチする阿呆がいったいどれだけいるのだろうか? 遠回しなツンデレを披露しやがって。そんな言葉を聞くこっちとしては余計に疲労もたまるってもんだ。 「ああ。そうだな、わざわざ待っててくれてありがとな。まあ、頼んだ訳じゃ無いんだけどな」  目には目を。ツンデレにはツンデレを。秘技ツンデレ返しとでも名付けようか。 「あたしだって、あんたを待ってたんじゃないわよ。ストレッチしてただけなのよ! そうよ、待ってたんじゃなくて舞ってたのよ!」  ストレッチを舞いと表現するには、いささか忍びないが……。まあ構わないか。このやり取りにも疲れた。いや今日が疲れたからそう感じてしまうだけなのかもしれない。結局それ以上突っ込む事無く二人揃って帰ることになった。  思い出せば、確かに俺は今日春菜の家でご飯を食べる事になっていた。こういう展開と言えば恋人同士が鉄板なのだろうが、そう言うわけではない。俺は今、一軒家で一人暮らしをしている訳だが、これも金持ちという訳じゃなく両親が死んでしまって家だけがあるという状態。暗い話はあまり長々としたくないので、そこは割愛しておく。
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