記憶フェイカー

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「分かってたんなら早く勉強しろよ。休み時間は後五分だぞ」 「大丈夫よ。あたし、運だけは良いの。いきなりのテストくらいどうにかなるんじゃない?」  事実、春菜は普段から成績優秀だから心配要らないだろう。前回の実力テストでは学年四百人中八位を取っていたし。ちなみに俺の順位は一位。やべっ! 自慢しちゃった。まあ、生まれついての記憶力に物を言わせてるだけなんだけどな。 「薫だって勉強なんてしてないじゃない。まあ、あんたは霊の記憶力のおかげでテストくらい苦じゃないわけね」 「ま、そういうこと」 「ホントあんたの記憶力ってどうなってるのかしらね。そういえば先週、あたしが階段から飛び降りてスカートがめくれた事件があったんだけど、その時にそばにいてあたしのパンツを見た男の子覚えてる?」  あれを事件と呼ぶなら、加害者はあなたで、被害者はその男の子なんだろう。 「一年生の中田って子だろ? 名札してたし。まあ、ピンクのフリフリを拝めたんだ。殴られた事に文句無さそうだったぞ。先月の白を見た先輩は足を踏まれてたな。去年のウサちゃんを見て笑った奴は酷かったな。鳩尾に一撃だったか?」 「しね」 「スネ!! ちょ! スネとか反則」  春菜は休み時間最後に俺のスネを蹴って行った。痛くて涙が溢れる。いーなーとか言ってる他の男子にこの痛みを分けてあげたいくらいだ。春菜の後ろ姿を見ると、最低マジ最低と呟きながら席に戻って行く。俺の席に駆け寄ってきた時の笑顔は何処かに無くしてしまったんですね。多分、鞄の中も机の中も探したって見つからないんだろう。でも肩から下げているスパイクを履いていなかっただけまだましだったか。
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