記憶フェイカー

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 朝からスパイクを片手に教室に入って来ていたって事は、また朝練だったか……。何を隠そう、春菜は陸上部エースにして一万メートル県大会優勝。インターハイでも入賞を果たす長距離ランナーだ。彼女の姉であり、生徒会長の若菜さんが陸上部現部長なので、実質この姉妹が陸上部を牛耳っているようなものだ。今年は姉妹揃ってリレーに出て、インターハイも決めている。最後の県大会は終わり、若菜さんは来月のインターハイを期に引退する。次の部長は当然のごとく春菜になるのだろう。  ちなみに俺はバスケ部の一般部員。やべっ! 自慢しちゃった。……しょうがないだろ。雄介を筆頭に周りが皆強いからな。県大会を最後に引退した先輩たちも県内では有名なくらいに上手かったし。一応、一昨日あった県大会では二位、インターハイ出場は逃した。 「あんたが足を引っ張ったんじゃない? 周りは凄かったのにね。薫がレギュラーなんて、顧問の見る目がないのよ。とんだイレギュラーよ」  俺のモノローグに口を挟むな! さっきの言葉をそのまま十ウザポイント加算して返してやるよ。 「しね!」  そうして、一日が何事もなく終わり、俺と雄介は部活に勤しむために体育館へ向かった。 「結局今日中にはテスト帰ってこなかったな。薫が教えてくれたとこは解けたけど、ちょっと点数やばいかも」 「まあ、そんときはせめて一発で再試終わらせてくれよ」 「あたりまえだろ!!」  再試を受けないってのを当たり前のラインにして欲しいところだ。そんな他愛のない会話をしつつ俺と雄介が体育館の中に足を踏み入れると、後輩である一年生達が挨拶の声を上げた。 「「チューーッス」」
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