記憶フェイカー

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 いや、野郎という表現はここでは正しくない。正しくは女郎だな。女郎と言うと、俺はついついジョロウグモを思い出してしまうが、なかなかどうして蜘蛛って奴はグロテスクな格好であんなに綺麗な巣を作り上げてしまうのだろう。自分の身に無い美しさを身の回りの物で補填しているかのようだ。そう思うと蜘蛛と言えども、人間味があって可愛らしい。  まあ、そんな着飾る人間はあまり友達にはなれないんだけど――。しかし、効率を最優先に考えた機能美としてなら話は別だ。実際、ジョロウグモも高機能で効率的な巣作りをしているので俺の目にも綺麗に映るのだろう。獲物が引っかかる糸と自分が移動するための糸を効率的に編み上げることが結果として幾何科学的な美しさを作っているのかもしれない。着飾る目的で作られた巣なら綺麗とは思っていないだろう。分からないけど――  話は逸れたが、その絡んできた奴。春菜と言えば分かるかな? うん、分からないよな。これから説明がてら、会話が行われるので、注意して聞いていただきたい。しかし、耳を傾けていただく前に注意点を述べさせて貰おう。春菜と言う女はどうしようもなく春菜なのである。  春と言うものがどうしようもなく春だと言うことと同じように―― 「おっはよー! かーおーるー!! 朝っぱらから元気そうねー!!」  肩まで伸びた黒い髪を風に靡かせながら嵐のようなウザさで挨拶をかましてきたのが春菜。どれだけウザいかを数値化しようとするなら、挨拶の中のポイントマークの数掛ける十が今のウザポイントと言ったところだろうか。ちなみに、寝苦しい夜に耳元を飛ぶ蚊が五ウザポイント。 「ああ、おはよう。ホームルームサボった割には朝っぱらから元気な奴だな。俺は見ての通り大して元気でも何でもねぇよ」 「病気?」 「極端なんだよお前は! 元気じゃないイコール病気なんて発想俺にはなかったよ!! 俺が悪かったよ!! 分かったならお前もさっさと勉強しろ!!」  あーあ。七十ウザポイント獲得だ。
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