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「お前が、好きなんだからしょうがないだろ!!」
俺が、彼女に、気持ちをぶつけたのは、もう6年も前だ…。
あの頃の俺は、彼女に対しての、距離の取り方がわからなくなっていた…。
俺の親友へ向けた、一途な彼女の想いは、永遠に、届かない…。
それでも、彼女の心の中には、あいつがいる…。
それを知っているから、俺は、自分の中の声を、押さえ込んだ…。
あの時、そのせいで、彼女は、俺の前で、泣き出しそうに、なっていたんだ。
「…なんで、助けてくれたの?
…なんで、殴られてまで、私を守ってくれたの?
…私…亀山君に、嫌われてるんだと、思ってた…。
…ちょっとは、亀山君と、近付けたかな、仲良くなれたかなって、思ったのに…。
今は…私との距離を…どんどん開けて…いくんだもん…。」
下を向いたまま、訴えてる彼女の肩が、小さく小さく震えていた。
彼女の口から、思いもよらぬ言葉か出て来たから、今しかないかもしれないと、俺は、あの時、覚悟を決めたんだ。
…たとえ、このまま、俺の恋が、砕けちまったってかまわないって。
…今の俺の気持ちを、素直に伝えられるなら、それでだけで、いいと。
俺は、自分の恋が、100%砕け散ると、正直なところ思っていた…。でも、結果は違ってた…。
あの日から、俺と彼女の関係は、それまでとは、違うものになった。
あの頃の二人は、きっと、ここまでは、考えてなかっただろうな…。
今、俺の腕の中で、彼女は、幸せな顔をして眠っている。
安心仕切って、すべてを俺に、委ねてくれる彼女は、今や、俺の妻で、彼女のお腹の中では、俺の子供が、すくすくと育っている。
今だから、誰に対しても、きっぱりと言える。
あの日、自分に対して、素直になってなかったら、きっと、今の幸福は、なかった。
あの日、彼女に言った言葉に、嘘はない。
あの日、彼女に言った言葉に、後悔はない。
あの時、そうだったように、彼女に対して、これからも、正直でいよう…。
『好きなんだから、しようがない!!』
俺は、眠っている彼女の額に、そっとキスをして、しっかりと、抱きしめなおし、幸福に包まれたまま、目を閉じた…。
[fin]
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