―入学式―

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春、それは別れと出会いの季節 中学校の卒業から三週間、その間、入学説明会やら課題などで中学時代の友達と会うことは減り寂しく思いつつも比例して新しい生活へ期待に胸を高鳴らせながら過ごしていた。 少し背伸びをしたくてちょっと遠い(成績ではなく物理的)通学に一時間くらいかかる高校を選んだ。 俺、八広工作は今日から見理工業高等学校、略して見工の機械科に入学する。 見工の歴史は百年近く卒業生も多い。そんなわけで不景気ながらも一学年の生徒数、300くらいの求人がくるらしい。 俺が見工を選んだのもそれがひとつの理由だ。 もっとも大きな理由は何かって? もちろん、見工の近くに女子校や女子比率の高い高校がたくさんあるからだ。 だったら普通科選んだ方が良くない?と言われたが、実はそうでもない。 普通科だったら、男は顔やスポーツ、勉強の善し悪しでけっこう決まるらしいのだが、工業生って肩書きだけで冴えない男が普通科の可愛い娘と付き合っていることも多い。(近所の大学生談) 工業高校にも女子はいるわけだが…… おっと、話がだんだんそれてきた。 まぁ、時間的にそろそろ入学式だから、ちょうどいいかな。 体育館に集められた一年生は機械科80人、電気科80人、建築科80人、土木科40人、科学工学科40人の合計320人だ。 事前に郵便で今日の予定や自分のクラスの案内がきていたため、皆落ち着いて席に座っていく。 俺も指定された席に座る。そして、ひとつ残念な事実に気づく。 俺のクラスに女子がいない! 男男男♂男男オトコ男子男男男オス男 普通科の高校にすればよかったかもしれん……ORZ そう思うほどにゴツイのやらチャライのやらオッサンぽいやつらばかりが集っている。 おかげでショックのあまり入学式での話はひとつも耳に入ってこなかった。 入学式が一応終わったらしい。どうやら、生徒は自分のクラスに行くようだ。 危ない危ない、ショックのあまり次の行動に取り残される所だった。 教室に着いた俺はやっぱり残念な気持ちになった。男ばっかり……。 まぁ、後ろの席で良かった。あんまり、注目されないから。 「今日から君らの担任の大迫だ。よろしく」 おぉ、若くて優しそうな担任じゃないか。 しかし、俺の安穏とした気分は直後砕け散ることとなった。 「じゃあ、君らの自己紹介をしてもらおうかな。八広君から行こうか」 なぜこうなった! 普通、番号の最初だろう。
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