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男は数瞬、目を瞬かせ、そして後にふつふつと湧く笑いをかみ殺している。かみ殺している、というだけであって、表に出ていないわけがなく、少女は表情にこそ出さないものの、徐々に身体に怒気が染み渡る。
それに気づいてか、ん、と声を漏らして言葉を続ける。
「悪い悪い。いや、お前の口からそんな冗談が出てくるとは思ってもみなかった。」
少女は押し黙ったまま足を交互に前に出す。木枠のベッドは足を揺らすほどにギシギシと悲鳴をあげている。
ひとしきりのダメージをベッドに与えた後、少女は立ち上がり、男の前に横向きで立つ。
それは、と言葉を切り、ノックをするように握りこぶしを男の胸にトンと当てる。
「きっときみに感化された、とでも言っておこうか。…間違いではないけれどね。」
その言葉に少なからず他意を感じる男は、ポフっと少女の頭に手を乗せ、そのまま過ぎ去りベッドに座り込む。
「あぁそうかい。やっぱり、血のこと、か。そんな大それたことじゃないと思うんだがな。」
「そんなことはない。君がいなくては、私は存在していないのだからね。」
苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべながら男はベッドに横になる。
「さて、用も済んだことだ。私はお暇した方がよさそうかな?」
どういう意味、と聞く口を閉じ、おもむろに傍らに掛けてある剣を掴む。横になったばかりではあるが立ち上がり、剣を抜く。
「あぁ、最近多いな。勝てるという算段はあってのことなのか?」
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