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耳を澄ますと、微かにきしりと床の沈むような音が数回鳴る。一つではなく複数。それもそこらの雑魚ではないと本能的に感じ取った。
「ふむ、キミはどうも恨みを買うことが多いようだね。一緒にいる身としては、恐怖するばかりだよ。」
あぁそうかよ、と全く以て信じてないというような返事を返す。
抜いた鞘をベッドに放り、片手でだらりと構える。抜いた剣は真っ直ぐに伸び、切っ先に向かうほど刀身が広がっている。
「たまの興に見ていこうか。」
部屋の奥に置かれた小さな木のいすに逆さに座り、背もたれに顎を乗せる。
「…面白いもんじゃねぇんだがな。」
ふぅ、とため息とともにドアが勢いよく開かれる。
全身が死装束を思わせる忍服のような振る舞いをした複数人が脇差を逆手持ちし、侵入する。
「明らかに暗殺者、だな。…4人か。それだけか?」
問いには応えず、赤く光る視線はただ男に集中していた。
その様子を見ていた少女は背もたれから顎を離し、男を見やる。
「察するに、これが例の『オート』というやつなのかな。」
「変わらず、洞察力は天下一品だな。その通りだよ。」
『オート』と称されたそれらはまるで生気を感じず、フシューッと息づく様は蒸気を吐く機械のようだった。
ギイィッ
つんざくような金属音が辺りの静寂を壊す。侵入した一人が脇差を男の首にかき立てるも、切っ先を上に向けて脇差に擦らせ、首を僅かに左に傾けるだけで射程範囲から見事に外していた。
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