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「速いね。まぁ、目で追える程度ではあるけどね。」
先に斬り込んだ一人は二歩下がり、残りの三人が逆手から順手に持ち替えた脇差を突き出す。
「常人にゃ反応仕切れないな、これは。」
「…私から見たらきみの方が化け物のようだよ。全く、面白いことをする。」
全ての刃は男の顔の数cm手前で止まる。刃はカタカタと震え、先へ進むのを拒否するかのようだった。
「ま、大したことじゃないさ。」
剣を持つ右手を左に持っていく。攻撃と分かってか、三人は迅速に後方へ下がる。
それに一瞬遅れて剣を振るう。すでに範囲外に逃げた4人には剣は当たらない。
「おや、君が剣を外すとは。何か悩み事でもあるのかな。」
不敵に笑みを浮かべながらベッドへ歩み寄る。その間侵入者は全く動かず…否。動くことができずにいた。
「悩みはねぇが、興なんだろう?見慣れねぇモンの方が楽しめそうだからな。」
少女が微かに驚いた顔をする。少女が表情を崩したのは今日初めてであった。それゆえに男はその顔を情けなく口を開いた顔で呆然と凝視していた。
「お前、そんな顔できるのかよ。」
「ふむ、心外だね。これでも感情は持ち合わせているよ。表に出さないだけでね。」
一拍置いてそれに、と言葉繋げる。
「先ほどの顔はきみが他人のために何かしたということに驚き、また感動しているのだよ。」
沈黙。数瞬の間を置いて男が笑い出す。鞘を取りながら侵入者を一瞥し、剣を引く。
それとほぼ同時に侵入者達の四肢に切れ込みが入る。
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