出会い

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昨日の部活紹介では、1年生でもレギュラーを狙える、と言っていたのに、アピールする機会すら与えられない。 確かに、今年の3年生は選手層が厚いが、自分が全く歯が立たないかどうか、やってみなければ、わからないではないか。 康祐はくすぶっていた。 翌朝の教室で、靖司に呼ばれて行くと、数人の女生徒に囲まれた彼がニヤニヤと笑っている。 「こっちは志村康祐。二人とも上川中野球部出身なんだ」 いきなり自己紹介された先には、色が白く、黒髪を肩のあたりで切りそろえた女子が、じっと自分を見つめていた。 (昨日言ってた、マネージャーだよ) 靖司が耳打ちする。 ああ、ミーハーの彼女ね。 康祐は心の中でため息をついた。 木下恵という名のその女子の後ろには、派手でいかにも男好きな感じの女子がキャアキャア騒いでいる。 (類友。 まあ、邪魔にならない程度に頑張ってくれ) 彼は、うんざりした顔で、すぐにその場を離れた。
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