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今朝の派手女は、休み時間の度に靖司の席にやって来て、しきりに野球部の話を聞きたがった。
「私もマネージャーやりたかったんだけど、早い者勝ちみたいで、メグに負けちゃったんだ。
あの子意外と行動力あるのよー。
あっ、私のことはさえらって呼んでね」
甲高い声が耳ざわりだったが、靖司が「適当に話合わせろよ」と小突いてくるので、康祐は取り合えず軽く相槌を打ち、やり過ごす。
昔から、社交ベタな康祐を、何かと取り持ってくれたのが靖司だった。
世渡り上手な彼は、その場その場で様々な顔を使い分け、決して人に不快感を与えないし、滅多に人の悪口を言わない。
口下手で、思ったことがすぐ顔に出てしまう康祐には、正直羨ましい性格だった。
中学時代、野球部で出会って以来、
「お前は、生涯の親友だ」
と、そんな自分を認め、常に気にかけてくれる彼に、口に出したことはないが、いつも感謝していた。
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