153人が本棚に入れています
本棚に追加
その日、チャンスが訪れた。
内野のシートノックの際、正二塁手の3年生がヘマをし、小山部長に怒鳴られていた。
部長はその流れで、一塁側で球拾いをする自分たちに、
「1年で、こいつらより守備がうまいと思うやついないか!?」
と、声をかけたのだ。
瞬時に康祐は手を挙げ、やる気を示すようにグローブをバシッと叩いて見せる。
そして、部長の指示でセカンドの守備についた。
ここで、アピールしておけば――
康祐は必死だった。
部長から来た打球を全て確実に捕らえ、一塁に送球する。
中には難しいゴロもあったが、康祐はひるまず自分のプレイを披露することができた。
ノックが終わり1年生の輪に戻ると、みんなが口々に、
「お前、勇気あるな。
先輩に睨まれるぞ」
「でも、あの場面であれだけやれるのはすごい」
などと声をかけてくる。
黙っていたって、チャンスなんて巡ってこないだろう――
心の中で毒づく康祐は、これで練習に参加させてもらえるかもしれないと、淡い期待でいっぱいだった。
最初のコメントを投稿しよう!