153人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、結局この日は、練習が終わるまで、いつもと同じように、先輩のサポートに明け暮れた。
――1年を使う気なんて本当にあるのだろうか?
康祐は疑問を抱きながら、皆と別れ、駅へと向かう。
ホームへの階段を上がると、ベンチに見覚えのある女子が座っていた。
彼女は康祐に気づくと、立ちあがり、
「あ……お疲れ様」
と、声をかけた。
(ああ、マネージャーの……)
「どうも」
彼はとりあえず挨拶をし、自販機でスポーツドリンクを買うと、恵と同じベンチの端に腰を下ろす。
(マネージャーも、こんな時間まで練習に付き合うんだ)
練習中、彼女が何をしているのかは知らないが、女子がこんな時間までいる必要があるのか?
康祐は疑問に思いながら、到着した電車に乗り込み、頭はすぐに今日のシートノックに切り替わっていた。
次のチャンスはいつ訪れるのだろうか――?
試合に出たい。
せめて、練習に参加したい。
夏の甲子園を狙うチャンスは、たったの3回。
グズグズしている暇はないのだ。
窓にもたれ目を瞑っていた康祐が、何となく先程の女子を見ると、彼女はちょうど下車しようとしているところで、
チラッとこちらを見て、
「じゃあね」
と小さく手を振った。
最初のコメントを投稿しよう!