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卒業式が終わり、野球部員たちは、何となくキャプテンの靖司がいる教室に集まっていた。
「高校では、ライバルだな」
国中がそう言ってニッと笑った。
「俺も、頭がよけりゃ南ヶ浦行きたかったのになー」
彼は、学区内にある私立高校へ進学する。
「まぁ、いつか県立球場で会おうぜ。
すまん。俺、この後彼女とデートなんだ」
靖司はそう言うと、ショルダーバックを肩にひっかけ、皆に手を挙げる。
「なんだよ。
卒業式くらい、友情を取れ」
皆のブーイングを一斉に浴びた靖司は、「悪い、またな」と言いながらも、特に悪びれた様子もなく、颯爽と教室を後にした。
「今度は誰と付き合ってるんだ?」
「1組の、田村かおりじゃねえの?」
「あれは、とっくに終わってるだろ。
家庭教師の女子大生はどうなった?」
とにかく恋愛に奔放で、女性にモテる彼は、次から次への特定の相手が変わっていく。
どんなに練習で忙しくても、女性に手を抜かない彼の器用さは、呆れるを通り越し、誰もが感心していた。
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