出会い

4/31
155人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
卒業式が終わり、野球部員たちは、何となくキャプテンの靖司がいる教室に集まっていた。 「高校では、ライバルだな」 国中がそう言ってニッと笑った。 「俺も、頭がよけりゃ南ヶ浦行きたかったのになー」 彼は、学区内にある私立高校へ進学する。 「まぁ、いつか県立球場で会おうぜ。 すまん。俺、この後彼女とデートなんだ」 靖司はそう言うと、ショルダーバックを肩にひっかけ、皆に手を挙げる。 「なんだよ。 卒業式くらい、友情を取れ」 皆のブーイングを一斉に浴びた靖司は、「悪い、またな」と言いながらも、特に悪びれた様子もなく、颯爽と教室を後にした。 「今度は誰と付き合ってるんだ?」 「1組の、田村かおりじゃねえの?」 「あれは、とっくに終わってるだろ。 家庭教師の女子大生はどうなった?」 とにかく恋愛に奔放で、女性にモテる彼は、次から次への特定の相手が変わっていく。 どんなに練習で忙しくても、女性に手を抜かない彼の器用さは、呆れるを通り越し、誰もが感心していた。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!