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卒業式の翌日、康祐たちは、南ヶ浦高校の野球部のグラウンドにいた。
合格発表の日に、部室に挨拶に訪れた際、村瀬主将から、卒業式が終わったら練習に参加するように言われたのだ。
この日は、康祐たち以外にも、違う中学出身の者が数名練習に参加していた。
長い間待ち焦がれた、高校野球生活の第一歩だった。
康祐は、小学2年生の時、入院先の病院のベッドで初めて高校野球を知った。
検査検査で退屈していた彼に、看護師がテレビで夏の甲子園を見せてくれたのだ。
その時の衝撃と感動は今でも忘れない。
自分とは無縁の世界にも思えたが、彼が初めて、能動的に「何が何でもやってみたい」と思えたのが、野球だった。
野球で力をつけて、甲子園に行ってみたい。
幼い康祐の胸は熱く燃え、それだけを生きる目標として、今日までやってきた。
康祐にとって甲子園は、『夢』ではなく、『道』であった。
彼の行く先に、必ずあるべきもの。
そう思っていた。
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