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「練習に参加する」とは言っても、ほとんどがそのサポートだった。
マシーンの球継ぎ、ボール拾い、タイムキーパー、マッサージなど、一日黙々と先輩の練習を手伝う日々が続く。
それでも、これまで中学野球しか知らない康祐には、体つきも気迫も、高校野球はやはり想像を超えるすごさがあった。
(これが、名門南ヶ浦か……)
康祐の心は高ぶる。
自分も早く練習に参加したい。
彼らの胸を借りて、自分の力を試してみたい。
練習中も後も、康祐は常にそのことばかり考えていた。
春休みは、毎日野球部に通い続け、あっという間に入学式の日を迎えた。
桜が舞い散る並木道を、一人校舎へと向かう。
野球部には毎日通っていながら、校舎に入るのはこれが初めてだった。
(野球部に入学した気でいたな)
康祐は心の中で苦笑する。
入学式に参列したがったいて母親も、結局仕事で来ることができず、康祐は内心ホッとしていた。
彼が中学2年生の時に、両親が離婚し、それからは母親と二人で暮らしている。
幼いころから、自分の病気のことで喧嘩ばかりする両親を見ていただけに、康祐は両親の離婚にそれほどのショックはなく、むしろせいせいした気持ちだった。
離婚後始めた仕事で、母親は地方に研修に出たため、卒業式後からしばらく、康祐は祖母の家で寝泊まりしていた。
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