出会い

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幼いころから、康祐はこの祖母が好きだった。 度重なる入院や検査で、生まれながらのポンコツ心臓に嫌気がさし、自暴自棄になっていた彼を、 「その心臓は、お前の個性の一つだ。 お前の苦しみは、お前が乗り越える試練だ。 決して目を逸らすな。 すべては、お前が背負った定めなのだよ」 と、祖母は厳しい口調で窘めた。 これまで、、励ましという名の同情や憐みの言葉を受け続けていた彼にとって、祖母のこの言葉は、ささくれた胸に響いた。 自分の運命を受け入れ、『自分の時間』を、全力で生きようと、そう思わせてくれた。 今の康祐にとっては、『甲子園』こそが、自分の「個性」と向き合い、目を逸らさず立ち向かうための、唯一の原動力となっているのだ。
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