一度負けた男

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どこかで見たことがある顔だったが、すぐには思い出せなかった。賭場ではなくラーメン屋だったことに内心がっかりしたものの、社会的に底辺の人々の食生活も興味深い。 僕は席に座り村中の顔をぼんやりと眺めた。 どこかで見たことがある、かといって個人的な知り合いではない。 茹であがった麺を頭の上まで持ち上げ一瞬静止、鋭く落としピタリと止める仕草で思い出した。 「ひょっとして、村中さんじゃ・・・」 僕の問いかけに村中は一瞬だけ視線を送ったが、答えなかった。 間違いない、濃厚三銃士の一人、村中栄吉だ。
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