一度負けた男

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「だいたいわかっていた。どっかの記者かなんかだってのは」 村中は僕の名刺をテーブルの上でくるくると回しながら言った。 村中の表情はかつてテレビで見たそれとは違い、深い喪失感を漂わせている。 「なぁ、聞きたいんだけど」 だが村中の目は輝きを失っていない。 「俺のラーメンはどうだったかな」 「もちろん旨かったです」 即答したが、僕はラーメンだけのためにここに通ったわけじゃない。
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