一度負けた男

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「あの・・・店じまいって本当ですか」 僕は折角見つけた分岐点を見失ってしまうのが怖かった。 「まぁね、東京に戻ろうと思うんだ」 僕は涙が出るほど安堵した。 初めて気づいた。 いつのまにか僕の中で村中の存在がこんなに大きかったことを。 「やっと気持ちに整理がついた」 外はすっかり日が暮れていた。 冷たい夜風がビニールシートの隙間から流れ込む。 「あの頃の俺は持ちすぎていた」 「持ちすぎて・・・いた?」 それっきり村中は喋らなくなった。 僕は仕方なくコップに残っていた酒を一気にあおり、席を立った。 テーブルの上に視線を落としたままの村中を残して、僕は店を出た。
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