一度負けた男

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横断歩道の白線の一本とまったく同化するようにだらしなく寝そべっている男。 薄汚れた作業着に伸び放題のヒゲと頭髪には白髪が多く混ざっている。 元の色がわからないほど手垢で黒ずんだ帽子の奥に、虚ろな瞳が宙を彷徨っていた。 僕は男と視線を合わさず進む。 今度は線路沿いの金網のマスをひとつづつ数える男がいた。
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