第一話 一度負けた男

一度負けた男

「東京でフリーライターやってる関口と言います」

そう言って「へぇすごいですねぇ」と言われるのは２０代までだ。
もうすぐ４０を迎えようとする僕の心の中では「いつまで続けるんだ」と自問自答を繰り返す。
都内の安アパートに妻と３歳になる息子と３人暮らし。
フリーとはいえ当然仕事を選べるわけではなく、便所の落書きと評されるような三流週刊誌の取材ルポを僕は引き受けた。
西日本最大とも言われるドヤ街あいりん地区の現状と生活保護の是非を問いかける特集記事。