四月

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両者ピシッと敬礼してから平太の言った通りに机を元の位置へと直し始める。 説明が遅れたが、この男の方が平太の兄で学校きっての変わり者と呼ばれている六條黒夢(ろくじょうくろむ)。 いつも何を考えているのかがわからなくありとあらゆることにボケようとする。 しかし、成績優秀で運動神経抜群でありとあらゆることを簡単にこなしてしまう正真正銘の天才。 素顔の方は長く伸びきった癖毛の前髪で隠れていて見えない。 平太の話では《次男のエシ》と同じくらい男前らしいが本当のところはわからない。 「ところで黒夢兄、随分と星崎と仲がいいみたいだな」 「あぁ、今日初めて話したけどなんとなく息が合う。まるで漫才のボケとツッコミのように」 「実際にはどっちもボケだから漫才が成立しないけどな」 黒夢と羽留花が二人は高度のボケキャラだから放って置いたら永遠にボケ続ける。 一瞬でもその状況を想像してしまった平太は頭に手を押さえるほど呆れ返った。 「けど、彼女にとっては俺とあんな風にしてるよりも彼氏である版図君と話している方が楽しい」 黒夢は自分とは離れて机を直しながら彼氏である末埜と話している羽留花を見てそう言う。 今の彼女はとても楽しそう、まるで小さな子供が親に今日あった嬉しい出来事を話しているときのように。 それを見ている黒夢もなんだかとても嬉しそうだ。
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