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銃声がまた一発、二発と轟く。
銃口から剣の部分を切り離したレイが、ミーシャ目掛けて発砲したのだ。
至近距離にして、正確無比な射撃。
それを展開した魔導障壁で弾くミーシャだったが、相当に魔力を込めているのか一つ受けるたびに腕が痺れる。
足を砂地に食い込ませ、なんとか耐えたその直後に再びこちらに接近してくるレイ。
がむしゃらと言うか何と言うか、多少の傷には目もくれないといった突進っぷりだ。
さすがのミーシャも一瞬怯む。
(好機……ッ!)
その僅かな躊躇いを見逃さず、レイはさらにミーシャへと接近した。
別段氷剣に頼る必要はない。
この距離からの発砲であれば、ミーシャの反射神経ではかわせないと彼女は踏んでいた。
それなりに威力は調節し、悪くても気絶程度ですむ弾丸を生成。
ミーシャの眉間を狙って右手の銃で打ち抜く。
これで私の勝ちだと、レイは核心した。
(とった!)
心中で叫ぶ。
しかしその叫びは、高らかな勝利宣言へと引導を渡すことはなかった。
「そこです!」
刹那の時間、レイは時がとまったような感じがした。
自分の目の前には、なぜか多少離れた距離にいたはずのミーシャがいる。
そんな彼女は身を屈め、まるで自分の懐に潜り込むように体を突き入れ、
「ぐッ……!?」
その掌底をレイの腹に打ち付けていた。
予想もつかない一撃。
よもや彼女にそのような気概があるとは思ってもみなかったレイは、あえなくそれを急所にうけ、膝を折った。
凡庸で力不足ながら、角度だけは正確。
ミーシャらしくないが、ミーシャらしい最後の一打だった。
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