黄金の眼

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しかし前へ進もうとした身体に少しの抵抗がかかった。 何事かと振り返る。 まぁ理由は分かっていたのだが、カレンがスーツの裾を掴んでいた。 「どうした?」 「うん、ちょっと気になることがあって……」 「ならさっきみんながいるときに聞くべきだったんじゃねぇか?」 カレンは首をふる。 その意図がよくわからず、ケイトは首を傾げた。 「私が聞きたいのは、シンくんのことじゃない。ミーシャちゃんのことだよ」 「ミーシャ・ワラキリアか?」 頷く。 「こんなこと言いたくないんだけど……あの子、これまでずっと見てきたけど、やっぱり少し変なんだよ」 ケイトは驚いた。 まず第一に、彼女がそのような言い方をすること自体がまれだ。 それを自分の弟子。しかも話を聞けばかなり可愛がっているその人物に対してとなれば、それもひとしおだ。 (それほどにってことか……) ケイトも思い当たる節がなかったわけではない。 今日、一時だけだったが、離れた自分の場所にまで届きそうな魔力のうねりを感じた。 あれが錯覚でなく、加えてカレンの口調から考えると、ことは重大なのかもしれない。 ケイトが押し黙る内にカレンは悲しげに眉を下げ、弟子のあまりに不可思議な性質を話し始めた。 「今日のことはけーちゃんも分かってるよね?」 「錯覚じゃなけりゃ、ミーシャは何か詠唱してたな。 クラス内対抗戦の時の術式を今回もちゃんとかけときゃよかったか」 本日の試合には、闘技場内まで戦闘者の声が聞こえる術式はかかっていない。 どうせ歓声に掻き消されるのだからと、大きな試合の時には施していないのだ。
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