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「なに難しい顔してんのよアンタは」
「あ、いや、なんでも……」
「……ふーん?」
眉間にしわでも寄っていたのだろうか。レイが訝しげにこちらを見ている。
気付けば先ほどまでイツキと話をしていたはずのミーシャからも、下から覗き込むように視線を向けられていた。
(……そんなわかりやすかったのかな?)
しかし当人のイツキ含め、他の三人にはまったく気付いた様子はない。
となれば、おそらくたまたまこっち側を見ていた時に発見されたのだろう。
ふむ……。メモ書きの内容でも気になったのだろうか。
「…………。」
「な、何かな……?」
とりあえずミーシャを注視してみる。
ミーシャなら、そんなこともあるかもしれない。
というより、この面子の料理を俺と二人で切り盛りしているわけだし、後でこちらからミーシャにもこのレシピを教えようと思っていたのだが。
「……あ、あの……ぁぅ……」
しばらく見ているとミーシャはなぜか頬を朱くして俯いてしまったため、これ以上は悪いと思い視線を外す。
「…………。」
「な、何よ……?」
代わりに、今度はレイを注視してみた。
こいつはどう考えても料理のレシピ書きなんて興味を示さないだろう。
というか、鍋を手にしただけで爆発させる才能の持ち主が、いきなりこれを覚えても意味がない気がする。
ならなぜ、こちらを見ていたのか?
考えるまでもない。ただの偶然だ。
「な、何でいつまでも黙ってこっち見てんのよ……」
むう、レイにまで目線を逸らされてしまった。
少々じっと見すぎたか。
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