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彼は背後から、私を優しく包み込んだ。背中に彼の体温を、息遣いを、感じる。
私はこの幸せなひと時に、そっと溜め息を吐いた。
そして、彼の腕の中で身を捩(よじ)ると、彼を正面に見た。
私は…………。
「もうっ! 何してんのよ、空!!」
「だってぇ、麦ちゃん……」
「だってじゃないでしょ! きちんとやってくれないと書けないじゃないっ!」
私の名前は六条 麦(ろくじょう むぎ)。
高校生だが、実は学校には内緒で、学生作家として活躍している。
この事を知っているのは、両親と幼馴染みの間 空(はざま そら)だけ。
そして今、彼に手伝って貰って、新作を書いているのだ。
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