高校生として

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「伊藤君は東華の野球部だよね?」 アルバイト初日、仕事内容の説明をしていた店長が思い出したように切り出した。 「あ、はい」 「あのさ、一緒にやらない?」 唐突という言葉が義彦の頭の中を駆け巡る。 「いや、あの、一緒にって‥‥‥」 何を? そう言おうとする前に店長が右腕を上げて、いかにもピッチングをするような動きを見せた。 「野球」 「えっ‥‥」 「まあ軟式の草野球だけどね、ほら、ここって都内に何店舗かあるだろ?それぞれに野球チームがあるんだよ。んでリーグ戦やって優勝チームには社長からトロフィーと副賞の商品券がいただけるわけさ」 店長は笑顔で続けた。 「まあ要するに野球を通じて社員やバイトのチームワークを育てたいらしい。社長、野球好きだからな」 義彦は少し困惑していた。 確かに自分は東華の野球部だったが‥‥ 「あの、自分は野球部と言ってもマネージャーなんで‥‥」 「知ってるよ。甲子園で記録係してたの見てたから。何?マネージャーは草野球とかしちゃいけないとか決まりがあるのかい?」 自分の父親に近い年齢に見える店長は、義彦の肩を軽く叩いて笑った。  
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