マネージャーとして

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2月の早朝。 まだ薄暗いグラウンドの隅を、黙々と走る少年。 白い息や真っ赤になった耳たぶとは対照的に、その額からは汗が滲んでいる。 彼を含めた同級生の殆どは、4月からの進路も決まり、後は卒業式を待つだけだった。 もっとも、中には卒業するために補習を受けなければならない生徒も数名はいるが、彼は登校日以外に学校に来なければいけないというわけでもなく、あくまでも個人的な理由でグラウンドの霜柱を踏み潰していた。 伊藤義彦18歳。 強豪校として有名な私立東華市場学園野球部に在籍。 3年生は昨年の8月で既に引退しているので、彼も元野球部と呼ぶのが相応しいかも知れない。 「伊藤!」 義彦がバックネット前を走り過ぎようとした時、自転車に跨がった大柄な生徒が彼に声をかけた。  
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