マネージャーとして

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「伊藤、俺は来週から大学の寮に入るからな。卒業式の前には帰って来るから試合には出るぜ。」 「そりゃ御台がいなきゃ話にならないだろ?まあ何かと大変だとは思うけどさ。」 御台晃司は高校野球界では屈指のスラッガーだ。 当然、昨秋のドラフトでも指名を受けたが、意中の球団ではなかったので、それを蹴り大学進学する事になった。 試合というのは野球部恒例の卒業記念紅白試合だ。 「まあ4年かけてきっちり結果出すさ。」 そう言いながら御台は缶コーヒーのプルトップを引き上げた。 「御台なら大丈夫、メジャーだって夢じゃないよ。」 義彦は缶コーヒーを一口飲んでから笑って見せた。 「紅白試合も今年は観客がすごそうだな....先生の話だと新入部員も去年の倍らしいし、御台効果だな。」 「ばーか、ヨイショしてんじゃねーよ。それにおまえだって試合には出るんだろ?」 義彦の笑顔が固まった。 「いや、俺は出ないよ。俺は主審だからさ。」 義彦は野球部のマネージャーだ。 子供の頃から野球が大好きな少年だったが、東華市場学園に於いて、義彦が選手として活躍する事はなかった。 1年の夏に、義彦は監督にマネージャーになりたいと願い出た。 選手たちをバックアップする事で野球に携わっていたかったのだ。  
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