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「小谷、今年はレギュラー取れよ」
キャッチボールをしながら義彦が声をかけると、小谷は体全体で返事をした。
「伊藤先輩!俺!自分が出来る事を全部っ!やってみますっ!」
やっぱり....小谷は変わった。
義彦はそう感じていた。
確かに根性もあり、野球のセンスもレギュラー部員に負けない物を持った小谷に足りない物....
野球に対する情熱。
それが去年の夏が終わってから徐々に現れている。
義彦はそれを素直に喜んでいた。
練習を終え帰ろうとする義彦を、小谷は呼び止めた。
「先輩!明日もまた来てもらえますかっ!?」
小谷の呼びかけに義彦は笑顔を見せて右手を上げた。
「あっ!そうだ!近い内に川中さんと広瀬さんが来るらしいですよ」
その名前は忘れる事など決して出来ない。
義彦の脳裏に去年の夏、ベンチの中から声を枯らして応援した試合が鮮やかに浮かんだ。
「天川の川中、広瀬?」
義彦がそう確認すると小谷は大きく頷いた。
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