第1章 第1話

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第1章 第1話

失敗した、と梓は思った。 天気予報では1日晴れると言っていた。だが、朝家を出たときに、少しばかり雨の匂いがしたのだ。 だけど今日に限って荷物が多かった。少しでも減らしたいと思ったのが間違いだった。 はぁ、と溜め息をつき、空を見る。厚い雲が一面を覆っている。やみそうにない。 「…どーしよ」 今日は塾がある日だ。それにクラスを決めるテストがある大事な日。雨宿りをしている時間なんてない。 もうこれは仕方ない。梓は教科書や参考書が溢れそうな程入ったバッグを気合いを入れ直すように背負い、学校近くの駅まで走ろうとしたとき、後ろから声がした。 「お前、傘ねーの?」 梓が振り返るとそこには、ビニール傘を2つ持ち、馬鹿にしたような顔で梓を見る、男子の姿があった。
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