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砂漠には色々な砂漠がある。砂漠といえば、砂と石と灼熱の大地。それに、迷ったら最期、生きては帰れないというイメージが強い。まぁ、無人島に取り残されるよりはまだましだが…。そんな砂漠の上を飛ぶCV-22の隊員達は、ペンタゴンの事務職員が書いた細かい規則など、頓着しない性格だった。ただでさえハードな軍隊生活で、規則にまで従っていたら身がもたない。ウィリアム・レノックス大尉は、音楽にあわせて身体を揺らす部下の方を見た。
レノックス「そいつは誰が歌ってるんだ?」
質問を受けたのはエプス二等軍曹だ。
エプス「ダディ・ヤンキーっす」
レノックス「そうか。なら、そいつに歌わせたらどうた?」
エプスはムッとした顔になった。
エプス「オレの才能を甘く見ない方がいいっすよ。いつかテレビのオーディション番組で優勝してやりますよ」
反対側では、ホルヘ・フィゲロア上級准尉が疲れた顔をした。
フィグ「もう十六ヶ月か。そろそろ故郷が恋しくなりますよ」
何気ない一言のやり取りをしているうちに、機体がガクッと揺れた。それは‘もうすぐ着陸’を表していた。CV-22の翼が水平から垂直へ回転していく。ヘリコプターモードに入ると、離着陸場に着陸した。レノックスを先頭に他の隊員も機外へ降りた。
??「レノックス!」
一人の少年が声をかけ、水を手渡した。
レノックス「おぅ、気が利くじゃねぇか」
少年の名はマーフーズ。この軍隊、特にレノックスに憧れている。
マーフーズ「へへっ…」
レノックス「今日も手伝ってくれるのか?」
マーフーズ「うん!」
レノックス「よし!じゃあ荷物運びを手伝え」
マーフーズは笑顔で走っていった。
統合司令センターの中は、人や複雑な機械でいっぱいだった。この機械は操作が難しく、あまり面倒な仕事はしたくない。しかし、世の中そう上手くは回らない。パソコンにむかっている内の一人が、その面倒な事を見つけてしまったのだ。しかし、知らせる以外に選択肢はなかった。
??「正体不明の機体を発見しました。距離十六キロで接近中」
すぐに当直指揮官がやって来て、モニターを見ながら警告の言葉をマイクに吹き込む。
指揮官「未確認機に告ぐ。識別信号を送信し、東に向かって軍事空域を離脱せよ」
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