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ポタッ・・・ポタッ・・・涙の粒が自分の手足や、むりして履いているミュールに染みのようについては広がってゆく。
あたしはそれをただ、座り込んでボーッと見つめていた。
頭の中が空っぽで、まるで時が止まってしまったみたいで、今、泣いていることでさえも自分の意志じゃないみたいで。
むしろ、全てのことがもうどうだっていいことのようにさえ思えた。
『風・・・花?』
後ろから肩に触れられて、あたしの身体はビクンと反応する。
それでもやっぱり顔をあげられないまま、逃げるように玄関を飛び出して外に出る。
まぶしい!?
夏の午後の陽射しの強さに一瞬、立ち止まって瞳をつぶる。
目眩さえおこしそうなくらいに頭がクラクラしてきた。
それでも、何とか前に進むために早足になってみるけど、ミュールのせいでうまく走ることができなくてもどかしい。
『風花!?風花!?待って!ねぇ!待って!』
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