chapter1

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たとえ桜が散りぎわであっても、入学式はなんの問題もなく行われるのだ、と当たり前のことを思った今日。 ドラマのように 「1年間よろしくね」 なんていうやりとりが私にあるわけもなく、並んで座り、体育館で無駄に長い話を聞いて、担任によろしくと言われただけであり、なんのアクションもなかった。 ただ、髪が元々栗色の私は、先生に報告をしなければならなかったけれど。 入学式といえば、保護者の存在はほぼ当たり前のようにある。学校では我が子を撮影しようとカメラを構えるその姿に、今はもういない自分の両親のことを少しだけ思い浮かべてしまった。 私は、1人だ。 入学式に来てくれる身内なんて、私にはいない。 まわりの人間はそんな悲壮感めいたものを感じとるのか、 「北栄の生徒?」 と、親しげに声をかけられることも今日で3度目だった。 .
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