chapter1

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「ええ、まあ」 一応笑顔を浮かべて応対するものの、心のうちには放っておいてほしい気持ちが9割9分を占めていた。 「私も上の子供が北栄でね? だからあそこには詳しいの。 あそこは優秀だし、課題の量も他の高校にくらべて多いわ。 だけど最初の1ヶ月を乗りきれば、あとはだんだん体がついていくものよ。それから……」 入学前に調べた知識をこれでもかとしゃべり続ける。 胸のうちに秘めた苛立ちが顔に出ていないか、少し心配になってしまった。 関係者以外立ち入り禁止。 この言葉の“関係者”とは、生徒のことも指すのだろうか。 遠慮なくあの道を進んでいく自分を想像して、自分でおかしかった。 そんなに執着して、何になるというのだろう。 「北栄はとても学校行事が盛んでねえ。体育祭の出来も素晴らしいし、私はあの子が入学して初めて参加したとき……」 まだ、話し続けていた隣のおばさん。 早く。早くこの人の降りる駅について。 はい、とか、そうなんですか、などと返事をしながら、そう祈り続けた。 .
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