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まるで其れは、闇の降る、嵐のような夜だった。部屋は牢獄さながらで、彼は懺悔するかのように、己の心を紡ぎ出す。
彼から溢れ出る言霊は、束縛するかのようにまとわりつき、這い蹲る、まるで呪いのようだった。
「───出でよ」
言葉を結ぶ、まるで太刀のような言霊。紡いできた言葉が、その、残響と残り香が、部屋の中心を核とした世界の引力に絡め取られ、ぶつかり合う。
その、せめぎ合いが最高潮に達したとき、全ての音が「静」に塗りつぶされて、一つの「道」を形成するのだった。
凪いだ、という表現があるいは相応しいだろうか。蠢いていた世界が凪いで、しかし、その次の瞬間には静寂を食い荒らすかのように、悲鳴のような金属音が鋭い光を伴って、世界を薙いだのだ。
それこそが、「道」そのものなのだった。
「────貴様が、私を喚んだのか?」
凛とした声が鈴の音のごとく、光から抜けてくる。女性の声だ。光は未だに煌々と、彼女の姿をひた隠す。
「ああ、そうだ」
光によって暴かれた彼の姿は、大凡の齢二十にも届かない少年で、耳までかかる髪と、鋭い瞳は、抜き身の刀のような黒色をしていた。
「ふむ……。それでは貴様の“望み”を聞かせてもらおうか。貴様は私と無限夜に何を望む?」
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