371人が本棚に入れています
本棚に追加
─あれは8年前の事だ。
いつもの雰囲気とは違い、風が強く荒れた天気だった。
わしは何やら胸騒ぎがするので家を飛び出した。
辺りを見回すが、これと言って変わりはない。
なんだ思い過ごしか。
そう思いながらふと村の外に目をやると、人が倒れているのを見つけたのだ。
わしは、放っておけばモンスターの餌食になってしまうと思い、慌ててその人の所へ駆け寄った。
行き倒れた旅人だと思っていたが、そこには傷だらけの少年が横たわっていた。
一体何があったのだろうか。
わしは瀕死の少年を放って置く事など出来るはずもなく、その少年を抱きかかえ連れて帰る事にした。
─数日後
看病の甲斐あってか、少年はみるみる元気を取り戻した。
わしは、どこから来たのか、何があったのかを尋ねてみたのだが、少年は首を傾げるだけだった。
何かのショックで記憶を失ったのだろう。
何か手掛かりになる様な物はないだろうか。
そう思い、少年の服に目をやると、腰にしっかりと結ばれた革の袋に気が付いた。
手を伸ばすと少年は抵抗する。
記憶を失っているにも関わらず、とても大事な物だと言う事を必死に訴えていた。
わしは、悪い様にはしない、お前の事が知りたいだけなのだと伝えると、少年は渋々ながらも手渡してくれた。
その革の袋はズシリとしていて、重厚な手応えを感じた。
それを左右に回しながら眺めていると、不思議な紋様と、消えかかった文字が記されている事に気が付いた。
最初のコメントを投稿しよう!