第一章 -旅立ち-

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─あれは8年前の事だ。 いつもの雰囲気とは違い、風が強く荒れた天気だった。 わしは何やら胸騒ぎがするので家を飛び出した。 辺りを見回すが、これと言って変わりはない。 なんだ思い過ごしか。 そう思いながらふと村の外に目をやると、人が倒れているのを見つけたのだ。 わしは、放っておけばモンスターの餌食になってしまうと思い、慌ててその人の所へ駆け寄った。 行き倒れた旅人だと思っていたが、そこには傷だらけの少年が横たわっていた。 一体何があったのだろうか。 わしは瀕死の少年を放って置く事など出来るはずもなく、その少年を抱きかかえ連れて帰る事にした。 ─数日後 看病の甲斐あってか、少年はみるみる元気を取り戻した。 わしは、どこから来たのか、何があったのかを尋ねてみたのだが、少年は首を傾げるだけだった。 何かのショックで記憶を失ったのだろう。 何か手掛かりになる様な物はないだろうか。 そう思い、少年の服に目をやると、腰にしっかりと結ばれた革の袋に気が付いた。 手を伸ばすと少年は抵抗する。 記憶を失っているにも関わらず、とても大事な物だと言う事を必死に訴えていた。 わしは、悪い様にはしない、お前の事が知りたいだけなのだと伝えると、少年は渋々ながらも手渡してくれた。 その革の袋はズシリとしていて、重厚な手応えを感じた。 それを左右に回しながら眺めていると、不思議な紋様と、消えかかった文字が記されている事に気が付いた。
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