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「……ロディ…」
レイナは、そんなロディをきつく抱きしめた。
それを見て、村長が口を開く。
「…今まで隠していてすまなかったなロディ。こんな形で話す事になろうとはな…」
元々話すつもりだった話。
だが、バーサーカーウルフの出現により、思ってもみない始まりを迎えてしまった。
「…うん。僕は母さんの子じゃないんだね…」
認めたくはないが、変わらない事実。
それを否定していても何も変わらない。
ロディはそう心に言い聞かせていた。
「……あのさ」
ロディは母さんから離れ、ポツリと囁く様に口を開いた。
「なんだロディ?」
村長がロディに目をやると、涙で濡れていた目が一変、何かを決意した様な鋭い目をしている。
「…じいちゃん!母さん!僕、マテリアルハンターになる!」
突然の言葉に辺りは騒然。
村長が素早く問い正す。
「…マテリアルハンターだと?それが何を意味するのかお前はわかっているのか!」
村長は鋭い眼差しでロディを睨みつけた。
その決意に満ちた青い瞳は、揺るぎない意志の力を感じさせる。
「うん。夢で言ってたんだ!16になったら<<エターナルマテリア>>を探せって!生きていれば必ず会えるって!」
ロディの迷いなき声は、村長を惑わせた。
「そうか…そんな時が来るのではないか。そう思ってはいたのだが…」
村長はうーんと声を漏らし、眉間にシワを寄せて渋い表情を浮かべる。
すると、レイナが突然声を掛けてきた。
「村長、いいじゃありませんか。この子ももう一人前の男です。自分の道は自分で切り開いて行く。この子を気持ちよく送り出してやるのが、母である私の願いです」
そう言ったレイナの目には、うっすらと涙が浮かんでる。
耐え難い悲しさが襲いかかる。
レイナはぐっと涙を堪えている様だった。
「…そうか。そうだなレイナよ。ロディはもう一人前の男であった。そうと決まれば今日はもう遅い。明日の出発に備えてもう寝なさい」
村長はフォッフォッと笑いながら、奥の部屋へと姿を消した。
心なしか、泣いていた様な気がする。
「…はい!ありがとう母さん!ありがとうじいちゃん!」
いつの間にか会合は終わり、当然の様に静かな夜は更けていった。
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