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─翌朝─
旅立つには絶好の天気。
いつにも増して照りつける太陽は、新たな旅立ちを祝福しているかの様だった。
「じゃあ行ってきます母さん!」
ロディは早々と支度を整え、別れを惜しむ間もなく旅立とうとしている。
それをレイナが制止した。
「待ちなさいロディ。そんなに慌てて…これを持っていきなさい。外の世界ではこれが必要になってくるから」
レイナの手には何かの入った袋。
ロディはそれを受け取り、ジャラジャラと音がするその袋の紐を解いた。
中を見て、ロディは唖然としてしまった。
「なっ…!!どうしたんだよこんなお金!5000ジュエルはあるんじゃ…」
中にはお金が入っていた。
5000ジュエルと言えば、農家が楽に稼げる金額ではない。
「……こんな時の為に用意していたんだよ」
少ない収入をやりくりし、少しずつ貯めたのだと言う。
それを聞いたロディの心には、何かが引っかかる。
「そんな…僕、本当の子供じゃないのに」
言ってはいけない言葉だった。
それを聞いた母は、唇を噛み締めて涙を堪え、ロディを優しく抱きしめた。
「そんな事ははどうでもいいの。ロディはロディ。私の子に変わりはないわ。可愛い我が子の為に用意したのよ。受け取ってくれるわね?」
ロディは目をつむり、その優しさにしばらく浸っていた。
そして、コクリと頷き小さく言葉を発した。
「……ありがとう母さん」
その言葉がレイナの耳に届いていたのかは定かではない。
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