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「…イド…ロイド」
(……誰だ?)
誰かが誰かを呼ぶ声がする。
顔形は影の様に黒いが、声の感じから老人だと言う事が把握出来た。
目だけはなぜか見て取れる。
「じいちゃん!」
(……この子供は僕?)
眼前に広がるイメージ──幼い頃の姿をした自分に似た人物がいる。
その自分がこの人──老人に向かってじいちゃんと呼んでいる。
「じいちゃん待って!」
「お前は来てはだめだ!」
(……この人は誰なんだ?)
幼き頃の自分の様な人物──少年は、この老人を必死に引き止めている様だ。
「僕を置いて行かないで!」
少年は目に沢山の涙を浮かべ、老人の服にしがみついている。
「いいかロイド?お前が16になったら、《エターナルマテリア》を探しなさい」
老人は優しい笑みをたたえ、少年の頭にぽんと手を乗せた。
「嫌だ!僕もじいちゃんと行く!」
少年は千切れるのではと思う位に首を横に振っている。
「だめだ!生きてさえいれば必ず会えるからな」
それに対し老人は、先ほどの笑みをどこかに消し去り、眼光鋭く少年を睨みつける。
そして、そのまま光の中へと消えて行った。
「嫌だよ!待って!じいちゃん!じいちゃーん!!」
泣き叫ぶ少年の、甲高い声が頭をこだましていく。
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