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村で一番大きな二階建ての家の前にある椅子に、白髪で立派な髭をたくわえた老人が座っている。
その老人はスッと立ち上がると、突然大きな声を上げた。
「ロディ、遅いぞ!」
「ごめんじいちゃん!」
その老人の声に驚き、ロディは慌てて駆け寄った。
この老人はロディの祖父であり村長である。
「今日は村長と呼びなさい」
そう言いながら険しい表情を浮かべた村長は、刻印を入れる為の刃を手に取った。
「はい!村長!」
ロディは、その刃のきらめきにゴクリと息を飲む。
「…じゃあ行くぞ」
村長はロディの服をめくると、なんのためらいもなくあらわになった肩に刃をあてがった。
ロディは少しひんやりとした刃の先端を肌に感じ、その刃をじっと見つめていた。
次の瞬間、村長はスッと流れる様に刻印を刻みこんだ。
「ぐっ…ぎっ…(い、痛てぇ!)」
想像を越える痛みに、ロディは歯を食いしばり耐える。
「なんだ?途中で止めてもいいんだぞ?」
「…いいや、大丈夫…」
そんな会話をはさみつつ、作業は淡々と行われた。
10分もかからない作業ではあったが、痛みのせいかロディにはとても長く感じられた。
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