運命

2/4
前へ
/33ページ
次へ
桃太郎を拾って早5年。 俺は人並みに『お父さん』になれてきていると思う。一生なれないと思っていた存在だから、凄く幸せだ。 「とぉーさまーぁー」 手を思いっきり振りながら、おぼつかない足取りで俺のところに駆けてくる。 フワリ 桃の花の香りがした。 この香りが胸を痛くする。 それは… 『桃の香りし者、鬼へと喰われその一生を終える。 それを守るは三つの光。 一つは翼有りし者 二つは闇切り裂く爪有りし者 三つは光へと導く知恵有りし者 すべては桃香る時にーー』 という言い伝えがあるからだ。 言い伝えは真であり、変えられぬ運命。 ーーどうして。 そう思っては拳を握る。 運命は悲しい程に残酷だ。 残酷だからこそ、人は愛する。 「どぉしたの??」 「ん?何でもないよ桃太郎。そういえば、今日はお母さんがご馳走だ!と言ってたぞ~っ」 「わぁーーい♪おごちちょう」 触れる小さな手。 この子が『桃の香りし者』なんて 愛しい。 血は繋がってなどいないが、俺の中にはもう桃太郎は自分の子供だ。だから、愛しくて堪らない。 拳を握る力が増す。 守れないと言うのはこんなにも悔しくて、腹がたつ。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加