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男が向かった先は、小川が近い、小さくもそこそこに活気溢れる村。
流石にデリカシーを感じ、村に入る前に自らを清水で洗うのかと思いきや、洗ったのは木車に乗せて拾ってきた様々な武具のみ。
そしてそのまま自分を洗うことなく、頑丈そうな木の門をくぐり、無味な表情で村へと入る。
「……おや? 我等が兵士様の御帰還だ」
その時、門の見張り台にいた、無精髭の男が、見た目のグロテスクさになんら驚くことなく、むしろ歓迎の意を兼ねて手をおおっぴらに振るう。
「今回も賊共から、中々に良さげな物を見付けて来たよ。これで暫くは貯蓄出来そうだ」
「そいつぁありがたいこった! 次に来る目利きの武器商も喜ぶだろうよ!」
それに対し男は、妙に薄っぺらな、不器用な笑顔を浮かべ、木車を押しながら戦利品を指差した。
門番と軽いやり取りを交わし、村に入ると同時、先程のやり取りを聞き付けてか、そこまで多くない人員の半数近くが、老若男女構わず男へと駆け寄った。
先程の血濡れた武具はどこへやら、鉛色に光るそこそこ上質な剣や、頑丈そうで軽い鎧に子供達は興奮している。
「すげー! 今回は大量だね兄ちゃん、少し触ってもいい!?」
「怪我するなよ? もし持てるんなら、構えてみてもいいぞ」
「どうせ重くて持てないの知ってる癖にー! ……あ、これなら持てそうだ!」
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