第1.5章 世の中は広く、世間は狭い

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早速ながら、中身と御対面としようじゃないか。 「へぇ、黒塗りの鎧か。中々に面白い趣向だな」 蓋を開けてまず最初に現れたのは、黒の兜だ。 頭どころか顔全体を覆い隠す様はまるで、漆黒の闇に飲まれるが如く。 形も、日本の兜よりは西洋のそれに近い物を感じる。目の部分は格子状だ。 次に堂鎧だが、此方も同じく真っ黒に染められた代物。 脇腹付近にある赤いラインが見事なコントラストを誇り、それが胸の上を通って首筋まで伸びている。 軽く叩いて見たが、重さの割に反響音は重厚で、動きを損なわずに防御が高いと、鎧としても最高の機能だ。 最後に現した腕甲と脚甲だが、腕甲は肘から腕の半ばに、脚甲は膝から足首にかけて刃があしらわれていた。 懐に潜り込まれた際の切り返し用の武装まで完備とは……全体的な評価として、取り敢えずは及第点といったところか。 軽くて丈夫、動きを損なわず、槍のような懐に潜り込まれると弱い点にも対応、ぶっちゃけると文句のつけようがない。 「どうだい一夜、出来映えの方は」 「完璧だな。得物がデカイ分、俺との相性も悪くなさそうだ」 「気に入ったのならよかった。ふぅ……今日はもう寝よう、流石に疲れたよ」 評価が終えたところで、旦那が大きな欠伸を漏らした。 確かに今日は何かと疲れる一日だった、おまけに色々と驚愕な点も多かったし、明日の事もあるから俺も寝なければ。 出しっぱなしの鎧を葛籠に押し込み、それを背負って旦那の後を付けた。 「一夜の寝床は私の部屋の隣だ、それじゃおやすみ」 「あいよ。いい夢みろよー」 俺も中に入ってさっさと寝る事にしよう。 粗雑に葛籠を起き、壁に大剣を立て掛け、少し固いベッドへと身体を放り投げる。 なんだかんだで疲労が溜まってたんだろう、目を閉じた直後、意識がすぐさま遠退いていく感覚を覚えた。 明日がどう転ぶか……楽しみだな……。
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