第2章 その男、弓兵につき

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晴れ渡る天空、優しい日差し。 ひんやりと心地よい冷気が漂う早朝、一夜は、昨日酒場で交わした曹操との約束を果たす為に、大通りを真っ直ぐ進んだ所にある宮殿の前に立っていた。 いや、正確に言うならば門の前である。 「確認が取れました。どうぞ中へ御案内いたします」 「お勤めごくろーさん」 おまけ程度の労いを掛け、案内されるがままに付いていく。 その合間、現代人からすれば国宝級であろう宮殿の内装を眺めていた。 この場所その物が博物館の如き風格が漂い、柱の一本一本が歴史的建造物というのがとても信じられないくらい。 この世代の人間も、まさかありふれた風景の一画が、千と数百年後に名を残すとは思わなかっただろう。 そうこうして周囲の風景を楽しんでいる最中、開かれた大きな扉へと繋がる階段の前へと到着。 案内していた兵士がまるで逃げる様に去る様子を怪訝に思いつつ、そっと目を閉じ、気配察知を過剰な迄に敏感にし、この先にいるであろう人物の気配を探知する。 (数は……1、2、3…………手練れそうなのは5、これからの成長に期待出来そうなのが5か。残りは雑魚だな) その中に混じる確かな風格を少々嬉々とし、一歩一歩静かに、大広間への入り口へと歩みを進める。 ……そして、登り終えた先の大広間、その最奥に、彼女はいた。
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