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子供達の一人が、男が先程まで握っていた、根元近くまで折れている剣を持ち上げた。
これくらいなら持てるのか、鼻息荒く上に掲げ、まるで英雄気取りの気分でまじまじと剣を見る。
「にしても、兄ちゃんは凄いよなぁ、兄ちゃんが使う剣はいっつも折れてるよ」
「うーん、剣自体は別に悪くないんだけどな、どうにも耐久性が俺に追い付かないんよ」
「俺も兄ちゃんみたいに強くなりたい! ねぇ、稽古しようよ!!」
その言葉を皮切りに、子供達は僕も私もと、男に詰めよってすがるように見上げてくる。
しかし、それを制する様に、一人の老婆が道を掻き分けて現れた。
「これこれ、つい先程賊共を追い払って下さったのじゃ、今はお疲れになっておる。……ささ、お湯を用意致しておりますゆえ、ゆっくりと養生なさって下され」
惜しそうに子供達は黙りこくるが、そう言われては引き下がる他ない。
おまけに彼女はこの村の村長であり、言うことを聞かねばならないのは、納得いかないにも仕方ない事だ。
「はは、そのうちまたやるさ。それまでは皆、家で手伝いをしながら鍛練を積み重ねな。……それじゃあこの荷物、お願いします」
別に彼自身、そこまで疲れを感じていなかった。
そのまま稽古をするのも悪くはないが、貴重な木材を大量に使用して沸かした風呂だ、逆に入らねば失礼だと思い、荷台を任せて足早に風呂へと向かった。
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